生徒のみんなには、よく理解してほしいことです。みんながこれから様々な人と出会う中で、必ずと言ってもいいほどに、発達障害というものに直面する場面が出てきます。
その時に、無理解であると、人を傷つけたり、自分が傷ついたりすることになります。
この世の中には様々な人が生きています。大人だから、職場の上司だから、子供だからと言って、その立場相応に”完全な人間”は存在しません。
そもそも人は ”不完全に産まれ、不完全に生涯を閉じる物です”
ただし、今の社会通念や社会常識上、できて「当たり前ではないか」ということが「当たり前でない」ことに遭遇すると、無理解だと「あの人はやる気がない」「あの人はおかしい」と断罪してしまう社会が出来上がります。
発達障害は、この「できて当たり前」が「ある事情でできないことがある」ということになります。そのできない理由はなぜなのか?また、どういうことができないのか?をここで一緒に勉強しましょう。
そうすれば、「できないこと」の「なぜ」の部分を理解することにより、「こうすればできる」という新たな切り口が発見できるかもしれません。それが、自分を、または自分の大事な人を守るための、新たな世の中を生き抜く方法を身に着けられるのです。発達障害だからと諦めてはいないとは思いますが、まだやりようはあります。
これは、とても大事なことです。発達障害は「病気」ではありません。
生徒のみんなも持っている、「苦手なこと」が「すごく苦手なこと」になっただけです。
そこを、取り違えないようにしてくださいね。
『やらないのではなく、やりたくてもできない』のです。
これが、「発達障害」の人の心の声です。
会社や学校で、
「何でこんな簡単なことができないんだろう」
「対人関係が下手だな~」
「何回言えば、分かるんだろう」
「何度、教えればできるんだろう」
と思う人に出会うことがあります。
そんな時に、「この人、やる気あるのかな~」と受け取つてしまうことが往々にしてありますが、少し様子をみてから判断してくれませんか?
ひょっとすると、それは、「発達障害」の症状かもしれません。
冒頭にも書いていますが、発達障害の人は「やりたくてもできない」のです。
ここで、少し、「発達障害」のことについて一緒に勉強をしましょう。
最近になって、ようやく「発達障害」というものが、社会的に認知されるようになってきました。
本屋に行けば専門書もあります。ネットで調べれば情報も見ることができます。専門のクリニックもあります。
しかし、「発達障害」はここ近年に発生したものではありません。昔から存在はしていたのです。
「ただ、周囲が気づかなかっただけ」
「ただ、1人で相談できずに悩んでいる人がいただけ」
「ただ、周囲の人が、あの人は ”何か違う” と違和感を持っていただけ」
「ただ、やる気のない人と簡単に決めつけていただけ」
の世の中の風潮であっただけです。
特に、現在の30歳以上の人たちは(2020年時点)、子供のころに「発達障害」と判定される環境が、なかっただけで30歳以上の人でも「発達障害」を持っている人もいます。このことを仕事塾では「隠れ発達障害」と呼んでいます。
「発達障害」を簡単に説明すると、
『ある、特定の物事について、上手くできない』ことになります。
このことで、仕事や学校の勉強、人間関係で悪いほうに影響がでたり、自己嫌悪に陥ったりすることがあるのです。
この原因は、『先天的に(=生まれながらにして)脳の発達機能に障害(=というと重大なイメージですが成長が少しだけ遅いと理解しましょう)を及ぼしている』、このことが影響しているといわれています。
ただ、これだけ医学が発達していても、真実は定かではないようです。
これは、とても大事なことです。『発達障害』は【病気】ではありません。
人それぞれに必ず持ち合わせている【苦手】が顕著に出ているだけです。
良く知られる症状として、
①「物事を整理することが ”とても” 苦手」→情報やモノの整理など
②「計画が立てるのが ”とても” 苦手」→仕事や宿題などの計画など
③「簡単な計算だけど ”とても” 苦手」→掛け算や割り算などの計算など
④「順番通りにすることが ”とても” 苦手」→仕事の手順や家具などの組み立てなど
⑤「人の話を聴くことが ”とても” 苦手」→商談や会議や朝礼など
⑥「コミュニケーションをとることが ”とても” 苦手」→人との接し方など
⑦「片づけるのが ”とても” 苦手」→部屋や会社の机など
上記のような事例がありますが、
これが、社会や仕事に入ると、【扱える権限】や【扱える責任】の【重さ】や【行動範囲の大きさ】
の影響で、
《”とても” 苦手なことが、より苦手として表れて目立ってしまう》ことや
《人と比較される ”分母が大きくなってしまい” より目立ってしまう》ために
【失敗すると、問題が目立ってしまったり、大きくなってしまったりして深刻化してしまう危険性】があるのです。
例えば、
「人間関係が上手くいかないために、上司や取引先から心証が悪く見られてしまう」
「計画が上手く立てられないために、仕事で失敗してしまう」
「発注ミスで大量に注文してしまう、少なく注文してしまう」
「お金を使いすぎて借金をしてしまう」
「部下や後輩に、無理難題を言いつけて辞めさせてしまう」
などが起こります。
ただし、「今、置かれている環境で、”生きづらさ” や ”やりにくさ” を感じていなければ、それは【発達障害】とは言いません。
家でも仕事でも、ミスを繰り返す、物覚えが悪い、時間にルーズ、物事が長続きしない、人を怒らせる言い方をする。
こんな場面に遭遇すると、「頭にカチン」ときて、叱ったり、怒ったり、怒鳴ったりしてしまうことがあります。
この時の、怒る側の感情は
【できて当然】→【できない】→【やる気がないから、努力が足らないから】→【こっちの気もわからないのに】→【怒りの感情が沸く】
こんな感じで動いていきます。
心理学的側面で考えると、『一人称』と『決めつけ』の2つの感情が優位的に出ています。
『一人称』は《私が》という観点で見てしまっている状態です。
『決めつけ』は《できて当然》という観点で見てしまっている状態です。
これを、逆の立場で見る『逆視点』をつかうと、
『ニ人称』と『受容』という感情になります。
『ニ人称』は《あなたが》という観点になり、『受容』は受け入れて認める観点です。
この逆視点を使うと、
【できない】→【なぜ、できないのだろう】→【苦手な事なのか?】→【相手の気持ちを確認しよう】→【そういう理由なのか】→【怒りではなく、理由がわかる】→【他にできる方法がないか考えてみる】
となる訳です。
叱る感情もわからないでもないですが、叱ったところで何も解決になるどころか、むしろ相手が感情的になったり、自暴自棄になってしまい逆効果になることが目に見えています。
さらにひどくなると、そもそも当人が苦手を理解している中で、感情的な対応を取り続ければ、【うつ】になる場合もあります。【うつ】になれば、引き上げることが相当難しくなります。
まして、叱った側も、後味がスッキリするわけでもありません。